倫敦橋からの風景

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ヴィンセバ高校生物語3

*現代パラレル設定ヴィンセバ連載小説




ヴィンセバ高校生物語3




告白から始まった一週間がようやく金曜になった。
今日も通学バスの終点で降り、2人はバス通りの交差点のすぐそばの
本屋へ入る。そこの2階へ登り、一通りフロアを見て、誰もいない書架へ
向かう。2人は適当に本を取り出し、無造作にページをめくりながら会話した。

「明日、午後一緒に出かけない?何か用ある?」
「明日?・・・別にいいですよ。どこに出かけます?」
「久しぶりにカウリーに行きたい。君のとこから近いよね」
「ええ、近いですよ。どこで待ち合わせますか?」
「じゃあセント・クレメンツの停留所まで来て?昼飯食べたら出るから。
 バス乗ったらメールする」
「分かりました、そこまで行きますよ」

ヴィンセントが本を戻し、セバスチャンの頬にすばやくキスをする。
セバスチャンも、そっと頬を傾けてヴィンセントの唇を受け入れる。
こうして、この本屋で別れ際にキスするのがお約束のようになっていた。
さすがに通学バスを降りてすぐ、他の生徒がいる前で挨拶でもキスが
出来る訳がない。あっという間に噂に登ってしまうだろう。最初はヴィンセントに
本屋の奥に連れられて何をされるのかと思ったが、彼なりに楽しんで
気を遣っているのが分かった。

土曜になり、昼食をすましたヴィンセントはバスに乗り込む。座席について
セバスチャンにメールを送った後はぼんやりと景色に目をやっていた。
バスがセンターの賑わった通りを過ぎると、間もなく三叉路になる
セント・クレメンツにさしかかる。ヴィンセントはバスのフロントガラスから
セバスチャンの姿があるか確かめた。

バス停に停まり、タップを降りるとすぐセバスチャンはヴィンセントを
出迎えた。セバスチャンの顔を見てヴィンセントが嬉しそうに笑った。
「君が出迎えてくれるだけで、いつもの風景が変わるんだね」
会った早々にそんな事を言われて、セバスチャンは言葉がつまった。
「君は背が高いから遠くからでもすぐ見えたよ」
「分かりますか?」
「すぐ見えて安心した。いなかったら嫌だったからね」
「うちはここから歩いて5分位ですからね、メール見てすぐ来ましたよ」
「それじゃあ、とりあえずカウリーに入るか」

セント・クレメンツから3つに別れる道の真ん中のカウリー通りに向かって
2人は歩きだした。センターのハイストリートと違って、このカウリー通りには
ボディピアスの店やら、レコードショップ、ライブ演奏が聴けるパブや
もちろんインディーズ系バンドが毎晩出演するヴェニューが数軒立ち並んでいる。

「ねぇ、ここ寄っていい?」
ヴィンセント達は、通りに入ってすぐのレコードショップに立ち寄った。
思い思いにそれぞれはCDやらレコードやらを手に取っては、しばし没頭していた。
ヴィンセントは何枚かインディーズバンドのCDを選んで買っていた。それから
カウンター脇に置いてある、オックスフォードの音楽シーンを扱ったフリーペーパーを
取って、セバスチャンに近寄った。
「君は何か買わないの?」
「ああ、今日はいいです、先週いろいろ買ったので」
「家から歩いて行けるからすぐ来れていいね、セバスチャンは。俺はやっぱりバスに
わざわざ乗って来なきゃいけないからね」
ショップを出て、また2人はぶらぶらと店を覗いては歩いていった。

通り沿いの店が途絶えて家ばかりになる頃、道を渡って今度は折り返し反対側の
ショップを見てまわった。途中にデリを見つけたヴィンセントがセバスチャンを
休憩に誘った。フランス系のその店には、ウインドウ近くにおいしそうなプティ・ガトーや
ホールケーキがかわいらしく並べられている。カウンターの奥には6卓ほどの
テーブルが並んでおり、その場で買ったものを食べる事ができた。
「君は何頼む?俺買っておくから先に座ってていいよ」
セバスチャンはガラスのカウンターの中の商品をさーっとチェックした。
「ああ、私はカプチーノだけでいいです」
「そう?何も食べなくていいの?じゃあ買っておくから座ってて」
セバスチャンは空いていた奥の角のテーブルに座って、注文しているヴィンセントを
見ていた。ヴィンセントはトレーに載ったカップとケーキをこぼさないように持って
やって来た。セバスチャンにカプチーノの渡して、トレーは自分の側に置いた。

「ふふ、またクリーム入りなんですね」
ホイップクリームが乗ったラテを見て、セバスチャンが笑う。
「言ったでしょ、俺はこれが好き。あとここのケーキも」
「ガトー・ショコラですか?」
「そう。ここのはしつこくないけどチョコが苦くてとろけて大好き」
ケーキの細まった部分をフォークで割って、ヴィンセントが口に含む。
「ひと口食べる?」
フォークに一かけら乗せて、セバスチャンの前に差し出した。
「ひと口なら」
セバスチャンは少しだけ口を開けて、ヴィンセントはそっと口に運んだ。
唇でフォークごと挟んでケーキを口に入れると、ヴィンセントが微笑む。
「ね、甘すぎないで美味いでしょ?」
「そうですね、これなら食べられる」
「もっと食べる?」
「いえ、いいですよ。そんなにたくさんは食べられない」
「君ってほんと甘いの食べないんだね」
「まぁ、貴方ほどは食べられないでしょうね」
「美味いのに」

ヴィンセントは先ほどのレコードショップでもらったフリーペーパーを出し、
パラパラとページをめくった。
「あ、このバンド今度やるんだ。ねぇ、一緒に観に行かない?そこの
Zodiacでやるんだけど」
「いいですよ。どんなバンドなんですか?」
「ちょっとネオサイケっぽいギターバンドなんだけど、この前のシングルが
結構よかったから。○○○っていうんだけど知ってる?」
「それなら私もシングル持っているかも」
「ほんと?じゃあ行こうよ、これ!」
これまでは時たまふらっと1人でライブは観に行ってたので、誰かと一緒は
初めてだった。このバンドを特別注目していた訳ではないけれど、
ヴィンセントと行くのが楽しみになった。

「ねぇ、君の家ってここからどれ位?」
ケーキを食べ終えたヴィンセントが唐突にきいてきた。
「え、・・・歩いて10分位ですかね」
「そう」
ヴィンセントがじっと見つめてくる。口角は緩やかに上がっている。
「・・・来ますか?家に」
「いいの?」
ああも確信犯的にやられて、断りようがない。
部屋に招いたらどうなるか・・・。少しだけ想像して、やめた。

「あ、カプチーノ代」
ジーンズのポケットから小銭を取り出そうとすると、間髪入れずに断られた。
「いいよ、俺のおごり。だってデートでしょ」
デート、そうですよね・・・。しかし、この場合、私はいつも
彼女のような立場なのだろうかと、ふと思う。男同士で付き合うと
どう変わるのだろう?まだセバスチャンは分からなかった。
2人は食べ終えて、席を立った。

それからまたカウリー通りを歩き、件のライブハウスを通り過ぎて
角を左に曲がれば、家のある通りになる。
午後のこの時間、まだ両親は出かけたまま帰ってきていない。
セバスチャンは、ヴィンセントをリビングのソファで待たせて
紅茶を淹れた。リビングのテーブルにカップを置こうとすると、
「君の部屋で飲みたい」
と言うので、そのままカップを持って階段を登った。

自室は、ベッドとデスクに本棚、ワードローブがありきたりに配置された
部屋なのだが、ヴィンセントは興味深く見まわしている。
「本棚見てもいい?」
ジロジロと見られるのは恥ずかしかったが、どうぞ、とだけ言って
紅茶のカップはデスクに並べて置いた。
ヴィンセントは、中腰になって本棚のCDや本を一通り見ていた。
「ねぇ、俺の持ってないやつ、借りてもいい?」
「いいですよ」
「俺もなにか持っていくからさ」
「ああ、いいですね」

紅茶は砂糖とミルクがたっぷり入ったアッサムティーで、
ヴィンセントはそれを美味しそうにすすった。
「美味いね」
「そう?よかった」
カップをまたデスクに戻すと、ヴィンセントは私の腕をそっと掴んで、
私をベッドに座らせた。

「セバスチャン、キスしていい?」
ヴィンセントの唇が、ゆっくり近付いてセバスチャンの唇に触れる。
軽く、掠るように触れるので唇の先端にだけヴィンセントを感じて
くすぐったくなる。セバスチャンの唇がヴィンセントを受けれるので、
その唇はもう少しだけ強く重なってきた。ヴィンセントの柔らかく
しっとりした唇の感触がよく伝わってくる。心がどこかに浮かんで
飛んでいきそうな感覚に襲われた。ヴィンセントの唇が一瞬、離れる。
それからまた、先ほどよりほんの少し深くしっかりと唇が触れてきて、
セバスチャンの唇を捕らえる。ヴィンセントは顔の角度を少しずつ
変えて唇をずらしてセバスチャンの唇を擦ったり、撫でるように合わせる。


yngvs03_20110921182557.jpg


ずいぶん長い間、唇を重ねた気がしたが、ヴィンセントは舌を
入れてこなかった。
「セバスチャン」
ヴィンセントはセバスチャンの両頬をそっと抱えて、前髪からのぞく
蒼い瞳が少しだけ暗く見えた。
「嫌じゃない?」
嫌かどうか聞くにしては、かなりキスされてしまいましたが・・・。
セバスチャンは黙って首をちいさく横に振った。
ヴィンセントの手のひらの弾力がやわらかく頬に伝わって温かい。
そっと、自分の手のひらをヴィンセントの手の甲に重ねてみた。
「セバスチャンの手はひんやりする」
「冷たい?」
「うん・・・」
ヴィンセントの唇が近付いたので、また瞼を閉じた。ヴィンセントの舌が
歯にあたってきたので、少しだけ口を開いた。ゆっくりと私の舌を探して、
触れてきた。初めて感じる、人の舌の感触だった。
どうすればいいのだろう、舌を動かすのか?
ヴィンセントはそんな自分の舌を撫でるように、転がすように触れてきた。
その動きにあわせて自分も舌をヴィンセントに触れてみた。

なんだか意識が飛んでいきそうになる、浮遊感。
何年か前にキスした女の子とは、こんな感じになってただろうか?
思い出せないけど、もうヴィンセントのキスで全てかき消されたような。
ふわふわとした気持ちの中で、舌の感触だけがはっきりして、お互い離れない。
ヴィンセントの吐息が熱く、短くなっているのが分かる。自分もきっとそうだ。

もっとこのまま唇を重ねていたいと思ったけれど、階下でドアの音が聞こえた。
私達はようやく離れたけれど、唇がすっかり唾液で濡れている。
ヴィンセントの親指が、ゆっくりと私の唇を撫でてきてそれを拭っていった。
そしてその親指を自分の唇にあてて同じように撫でている。
じっと、その親指の動きをもう少し見つめていたかったが、親が帰ってきてしまった。

「じゃあ、俺は帰ろうかな」
「あの、たぶん母が帰ってきたと思うけど。いいですか?」
「うん、ちゃんとご挨拶はしないとね」
私が一瞬、口ごもると、ヴィンセントがにこっと笑って答えた。
「もちろん、普通に友達として。君を困らせる真似なんかしないよ?」
ヴィンセントは敏くて反応に困る時もあるが、安心する。

私はヴィンセントを玄関まで誘導して、リビングにいる母親に声をかけた。
ヴィンセントがいつものように穏やかな口調でそつなく挨拶をする。
それから家を出て、イフリー通りのバス停まで歩いていった。
「優しそうなお母さんだね。それに君によく似ている」
「そうですかね・・・」
「今度は、家においでよ?」
「ええ、次は貴方の家に行きたいですね」
しばらくするとヴィンセントの乗るバスが近付いてきた。
ヴィンセントは、さっと私の頬にキスをして、手を振ってバスに乗り込んだ。
バスがセントクレメンツに向かって見えなくなるまで私は見送った。
唇にそっと指をあてると、先ほどの感覚が蘇った気になった。
それを思い出すだけで、また意識がどこかに浮いてしまう感覚になってしまった。

自宅に戻ると、母親が声をかけてきた。
「さっきのヴィンセントは、いい子そうね。きれいな言葉とアクセントだったわね」
母はヴィンセントを気に入ったようだ。
これなら、これからも家に呼んでも大丈夫そうだ。


(続く)

→ ヴィンセバ高校生物語4話

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| ヴィンセバ小説 | 15:34 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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